3

マミ「え?喫茶店?」

ある日の朝。学校へ行くため、制服に着替えるマミに、ベッドから杏子が声をかけた。

杏子「うん。今日、そっちが学校終わったらさ、待ち合わせして、行かないか?」

マミ「ええ、行きましょう。」

杏子「出かけてる間、ゆまはキュゥべぇの奴に面倒見させるし。」

まだベッドで眠るゆまの頭を撫でながら、杏子が提案する。

QB「え~」

杏子「なんだよ、嫌なのかよ」

マミ「キュゥべぇ、お願いできる?」

QB「任せてよ!マミ!」

杏子「おい!あたしと反応が違いすぎねえか!?」

マミ「うふふ」


そして放課後。

マミ「ここが杏子の言っていた喫茶店?綺麗なお店ね。」

階段を少し登った場所にある、カフェテラスに腰かける。

マミ「杏子はまだ来てないのかしら。あ。」

杏子が、人混みをかき分け、階段を登ってきた。

マミ(人混みの中からでも、杏子を見つけるの、うまくなったかな)

だが、少し階段を登った所で、こちらを見て固まってしまった。


マミ(どうしたのかしら?急に不機嫌な顔して。)

杏子「…帰るぞ。」

マミ「え?」

杏子「いいから!」

腕を掴んで、ずんずんと階段を降りてゆく。

マミ「ちょっと?杏子、痛いわ」

周囲の人がこちらを見ているのに気がついた。

杏子「見てんじゃねえ!見せもんじゃねえぞ!」

杏子が周囲の人に怒鳴りつける。

マミ「いきなりなんなの?ひどいわ!」

杏子「うるさいっ。行くぞ!」

マミ(む)

バチンっ!

杏子「いてっ?!」

マミ「楽しみにしていたのに!ばか!」

杏子「お、おい!まって!」


マミ「え、喫茶店?」

ある日の朝。
学校に行くため、制服に着替えるマミを見つめながら、声をかける。

杏子(綺麗な体だなあ)

華奢なのに、出る所は出ている体。

杏子(おっと、あんまり見つめてたら怒られるな)

実は昨日バイトの給料日だったのだ。
日頃お世話になっている、マミをデートに誘ってみた、というわけだ。

杏子「うん。今日さ、そっちが学校終わったらさ、待ち合わせして、行かないか?」

マミ「ええ、行きましょう。」

杏子(よし!だが、問題はゆまだ。)

ついてくるとか言えば大変だ。
だが、作戦はねっている。

杏子「出かけてる間、ゆまの面倒はキュゥべぇの奴に面倒見させるし。」


QB「えー」

こいつ!

だが、マミがお願いをすると、キュゥべぇのは急に態度をかえ、了承した。

杏子(久しぶりに二人きりだな)


そして、放課後。
待ち合わせの場所へ向かって走る。

杏子(やべ、少し遅れたか。お)

いた。

階段を登った先のカフェテラスに座っている少女。

杏子(…やっぱり目立ってるな)

やっぱ可愛いもんな。

なんて思いながら階段を登っている途中。

杏子(な、な!?)

目の前に飛び込んできたのは、マミのパンツ!

杏子(か、階段を登る途中の目線が、丁度座ってる女の子の脚の間の高さになってるのか)

一瞬見とれていたが。

杏子(まてよ?あたしが見えるって事は)

辺りを見舞わす。
やはり、階段の途中からマミのスカートの中を覗きこんでいる男が沢山いた。


杏子「帰るぞ!」

マミ「え?」

杏子「いいから!」

マミ「ちょっと?杏子、痛いわ。」

杏子「見てんじゃねぇ!見せもんじゃねえぞ!」

ちくしょう!マミをやらしい目で見やがって!

マミ「いきなりなんなの?ひどいわ!」

男がお前のパンツ覗きこんでる、なんて説明できるわけない。
マミのやつは傷つくに違いない。

杏子「うるさいっ!行くぞ!」

その瞬間。
頬に激痛が走った。

杏子「いてっ!?」

マミ「楽しみにしてたのに!ばか!」

杏子「お、おい!まって!」
な、なんでぇ!?


マミ(もう、杏子のばか!)
せっかくのデートなのに、あんなに乱暴にして、周りの人に威嚇するし。

杏子につかまれた手が痛い。

マミ(…でも。)

それ以上に、杏子を叩いた手が痛い。

マミ(杏子にも理由があったのかもしれないのに。悪い事しちゃったかしら…。あら)


少女「うーん、困ったぁ」

少女が道端で唸っている。

マミ「どうしたの?」

少女「大切な指輪…無くしちゃったんだ。どこで落としたのかなあ」

マミ「大変ね、私も手伝うわ。」

少女「…。ありがと」

二人で歩きながら、指輪を探す。だけど。

マミ「…見つからないわね」

少女「私の。友達に貰った大切な指輪なんだ。絶対見つけるんだ。君は帰っていいよ。私に付き合う必要はない」

マミ「ううん。もう少し、手伝うわ。」


杏子(マミの奴、人の気もしらないで!)

マミに叩かれた頬が痛い。

杏子(でも、もう少し言い方もあったかな…)

でも、それ以上に心が痛い。

杏子(マミを追いかけ…。でも、いきなり叩く事ないよな。あーもう、しらねえ!)

マミ「楽しみにしてたのに!」

マミの言葉が蘇る。

杏子「あーもう、ちくしょう!」

そして、杏子はマミの走り去った方向へ駆け出した。
だけど。

杏子(あーもう、どこ行ったんだ?)

見つからない。

杏子(足速すぎだろ…)

道端にへたりこむ。

杏子(お。指輪?)

道に落ちていた指輪をひらいあげる。

杏子(綺麗だな。お、寸法、マミにぴったりだ。)

それをポケットにつっこむ。

杏子(…マミに上げたら、機嫌よくなるかな)


そんな杏子を物陰から見つめる人影。

ほむら「…デートだというから覗きにきたのに。いったい何をしてるのかしら」
少女「あの、ここらで女の子見かけませんでした?黒い髪をショートカットにした子なんですけど。」

ほむら「…悪いけど知らないわ。…え?」

少女「そう、どうもすいませんでした」

何かに気がつき振り向くが、少女はすでに立ち去っていた。

ほむら「…今の子。ただならぬ百合力をはっしていた。まさか…」


拾った指輪をポケットに入れ、マミを探す。

杏子(…一体どこに。あ。)

いた。金髪のクルクルおさげの美少女。
どんなに離れていても、マミの姿は見分けられる自信がある。

杏子「マ…」

声をかけようとした瞬間。もう一人の存在に気がつく。

杏子(誰だ?あいつ)

マミと仲良さそうに談笑している少女。

杏子(マミの奴、あたしが必死に探してたのに、なんだよ、そっちは女の子と仲良くしてたのかよ!)

一瞬。嫉妬で胸が締め付けられる。

杏子(…いや、落ち着け、杏子!お前の知っている、マミは。お前の好きなマミは、そんな少女だったか?)

否。
断じて否!

杏子(お人好しなマミの事だ、きっとまた人助けでもしてるに違いない。)

こそこそ、と近づく。

杏子(…なんかほむらになった気分だ)

少女「…指輪は見つからなかったけど。気持ちは嬉しかったよ。ありがとう、恩人。」

マミ「お役に立てなくてごめんなさい。大切な指輪だったのでしょう?」

少女「うん。私の命より尊い指輪だけど、恩人は気にしないで」

マミ「おもっ!重すぎるよ!」


杏子(指輪?まさかさっき拾ったこれか?)


マミ(ううん、困ったわね。)

命より尊いとか言われてしまうと、ほってはおけないし。

少女「指輪を無くしちゃった事はつらいけど。指輪よりもっと尊い人が私にはいるから。」

マミ「…それってあなたの彼氏?」

少女「違う。そんな低俗な存在じゃない。彼女はこの世界の何より尊い存在なんだ!」

マミ「彼女?女の子なのね、大切な人って。」

少女「そうだよ、恩人。おりこは私にとって全てなんだ!」

マミ「…素敵なお友達なのね、そのおりこさんって。」

少女「その通り!」

マミ「私も、大切な友達がいるんだけれど、さっき喧嘩しちゃって。」

少女「喧嘩したくらいで何を悩んでいるんだい、恩人。」

マミ「え?」

少女「喧嘩したら、ごめんなさい、それで解決だ。」

マミ「…。」

少女「私もおりこにごめんなさいしないとだ。」

マミ「そっか、指輪見つからなかったものね」

少女「うん、それもあるけれど。」

マミ「他にも何かあるの?」

少女「指輪探すのに必死で、待ち合わせの時間を越えてしまった。」

マミ「ええ?!大切な人なんでしょ?」

少女「…かれこれ4時間位。」

マミ「本当に大切な人なのよね!?」


杏子(なんか楽しそうだな…。)

物陰から覗きこむ、杏子。
マミと黒髪の少女が仲良く会話していて、出にくい。

杏子(でもこの指輪、探してるかもしれねえし…)

金髪の少女「あの。」

杏子「うわぁ!?」

突如後ろから声をかけられ、振り向く。

杏子「な、なんだよ、びっくりするだろうが!」

金髪の少女「…その指輪。間違いないわ、私がキリカにあげた指輪。」

杏子「ああ、これは…」

金髪の少女「…キリカを。キリカをどうしたの」

杏子「!」

杏子(なんだ、このプレッシャー!?)

背中に嫌な汗がたれる。

杏子(間違いない、こいつ、魔法少女!)

金髪の少女が球体を召喚する。

杏子(あれがあいつの武器?遠隔タイプか。相性悪いんだよな)

杏子も槍を召喚する。
人気のない路地裏。
ここでやる気か。


金髪の少女「キリカを、返してもらうわよ」

杏子「まて、この指輪は…」

問答無用、金髪の少女の武器が飛来する。
回避するが、起動をかえ、杏子に向かって飛んでくる。

杏子(ホーミングしてやがるか。ならば)

杏子「神槍!回天!!」

振りかざした杏子の槍が多節棍に姿を変え、球体をなぎはらう。

金髪の少女「…やるわね。だけど」

杏子(まだ何か隠してやがるのか?!)

金髪の少女「…あなた、必殺技の名前を叫んでるのですか?」

杏子「へ?あっ」

杏子(あたし、今、無意識で叫んでた?!)

恥ずかしくて顔から火がでる!

金髪の少女「…『魔法少女使い』の手駒というわけではなさそうね」


杏子「なに!?」

忘れもしない。ゆまを操っていた、あの男。


マミ「杏子!?」

少女「おりこ!」

戦いの音が聞こえたのか。
二人の少女が駆け寄ってきた。



ほむら「…やはり、『あの時』の百合カップル…」

そんなやり取りを、遠くから見つめるほむら。

ほむら「面白くなってきたわ!百合カップルが二組で百合力倍増よ!…あ、鼻血でた」

QB「…君は相変わらずだね。はい、ティッシュ」

ほむら「…。ありがとう」


マミ「…」

杏子「…」

みつめあう二人。どことなくぎこちない。

マミ「あ、あのっ」

少女「おりこ!!」

おりこ「キリカ、無事だったのね、良かった」

キリカ「うん、心配をかけてしまったね。私はおりこにあやまらないといけないんだ。」

おりこ「え?」

キリカ「君にもらった指輪を無くしてしまって。それを探していたせいで君を待たせてしまった。」

キリカを優しく抱きしめるおりこ。

おりこ「ううん、いいのよ。私も今来たところだし。」


マミ「あなたも4時間遅刻!?」

おりこ「それに、指輪は…ね。」

杏子「あ、ああ。さっき、拾ったんだ」

キリカ「あ!」

杏子「うわっ」

杏子からひったくるように指輪を奪う。

杏子(速い!?あたしよりも?)

キリカ「良かった!ありがとう、恩人とそのおまけ!!」

杏子「あたしおまけ!?」

キリカ「それじゃあ行こう、おりこ。」

おりこ「ええ。」

杏子「お、おい」

おりこ「近いうちに。また会うわ。…いえ。」

こちらを見つめ、微笑みを浮かべる。

おりこ「また、『遭う』わ。必ず、ね」


去ってゆく二人。

マミ「?」

杏子「…。」


マミ「一体何者なのかしら。ねえ、杏子…あ。」

いつものように呼び掛けようとして、喧嘩をしていた事を思いだす。
そして。同時に、キリカの言葉を思いだす。

キリカ「喧嘩をしたらごめんなさい、それで解決だ。」

マミ「…杏子。さっきは、ごめんなさい。」

杏子「えっ?」

マミ「あなたの言い分も聞かないで、叩いちゃって。」

杏子「…白。」

マミ「え?」


杏子「パンツの色。朝と色が違ってる。家でシャワーでもあびた時着替えた?」

マミ「ええ?!な、何で知ってるの!?今日、体育があったから、デート前に家に帰ってシャワーあびたけど。」

杏子「見えてたんだよ。」

マミ「…私には話が見えないのだけど。」

杏子「あの喫茶店、階段からお前のパンツ見えてたんだ。」

マミ「ふぇ?!」

マミの顔は真っ赤に染まっていた。

杏子「お前のパンツ見られたくなかったから、乱暴な事して。…ごめん」


マミ「…そうだったのね。私のために。ありがとう、杏子。」

杏子の胸に、額をくっつけ寄り添う。

杏子「あ、あ、いや。別に、もう気にしてないから」


ほむら「あ、あれは!カップル技の中でもかなりの難易度をほこる、『額をくっつけておしゃべり』!?
照れている表情をあえて隠す事で、相手により一層のかわいさをアピールする奥義!さすが巴先輩!」


QB「…わけがわからないよ」

夜のベンチで肩をよせあい座る二人。

マミ「ねえ杏子?そういえば、どうして指輪を拾っていたの?」

杏子「ああ、綺麗だったからさ。マミにあげたら機嫌治るかと…」

マミ「…へえ。拾った指輪を?」

杏子「あ、あれ?何で怒ってるんだ?」


ばちんっ


マミ「ただいま。」

杏子「…ただいま。」

マミ「…。」

杏子(マミの奴、何を怒ってんだよ。せっかく仲直りできたと思ったのに)

ゆま「おかえり、マミおねえちゃん、キョーコ。」

パタパタとかけてくるゆま。

ゆま「…。喧嘩でもしたの?」

マミ「何でもないのよ。今、ご飯を作るわね。」

台所へ向かうマミ。

ゆま「…うそ。」

杏子「ああ?」

ゆま「いつもマミおねえちゃんは、杏子と二人で帰っても、杏子のただいま、におかえりなさいって返してたもん」

杏子「…ゆま、くうかい?」

ポッキーを差し出す。

杏子「ベランダにでもでて、二人で話そうぜ?」


ベランダ

ゆま「ポッキー美味しい!」

杏子「そうか」

ゆま「キョーコ、話って?」

杏子「…さっきまで、公園のベンチで仲良く座ってたんだよ。なのに」

ゆま「?」

杏子「綺麗な指輪拾ったから、マミにあげようかと思ったって言ったらおこりだして」

ゆま「それはキョーコが悪い!」

杏子「なんでだよ!」

ゆま「だって、女の子にとって、指輪を贈られる事ってとても大きな事だもん。
それを拾った指輪で、なんて。」

杏子「そうゆうもんなのか?綺麗ならいいじゃねえかあたしはそんな事で怒らないよ」


ゆま「えー!じゃあマミおねえちゃんが手作りケーキのかわりに拾ったお菓子をキョーコに食べさせたらどうするの?」

杏子「怒る。」

ゆま「…。」

杏子「…。」

ゆま「わかったよね?」

杏子「でも、お菓子と指輪は違うだろ!マミのケーキ楽しみにしてたら拾ったお菓子、とか傷つくわ!」

ゆま「ほらね」

杏子「…うん。」

にっこり笑うゆま。

杏子「…マミに、あやまってくる」


一方。台所。

マミ「さて、なにを…。きゃあ!?」

QB「マミ…おかえり」

そこにいたのはキュゥべぇ。


マミ「ぼろぼろじゃない!一体なにが!?」


QB「…子供の相手は疲れるよ。ガク」

マミ「きゅ、キュゥべぇ!」


台所


杏子「マミ…。ちょっといいかい?」

マミ「…杏子」


QB「…僕は少し席を離すよ。なんとなく再びゆまの相手をしなきゃいけない空気だ。」



マミ「あ。…料理、つくらなきゃ」

くる、と背中向けて、料理をつくり始めるマミ。

杏子「…」

マミ「きゃっ」

後ろから、マミを抱きしめる杏子。

杏子「…さっきはあたしが悪かった。デリバリーがないこと言って」


マミ(…デリバリー?杏子、ピッツァが食べたいのかしら)

マミ「き、杏子、ピッ…んっ?!」

マミが振り返った瞬間、唇が奪われる。

マミ(ふぇぇ!?は、激しすぎ、息ができないっ)

必死に杏子の体を叩く。
一度唇が離れる。

杏子「マミ。」

マミ「…ふぁい」

目がとろん、としているマミ。

杏子「ごめん」

もう一度、キス。
唇ではなく、その少し横、左頬。

マミ(…仲直りのちゅう)

マミ「私のほうこそ、ごめんなさい。つまらない事で怒ってしまって。
…私、面倒な女の子なのかしら」

杏子「そんな事ねーよ。…なあマミ、銀のスプーンとかもってる?」


マミ「え?うん、少し前にアンティークショップで買ったのがそこの食器棚に」

杏子「これか」

銀のスプーンを取りだし。
マミの左手を握る。

マミ「え?」

スプーンをマミの左手にあてる。

魔法。

マミ「…綺麗」

銀のスプーンは姿を変え。
マミの左手に指輪として収まった。

杏子「へへ」

マミがうつむき肩を震わせる。


杏子「どうかな」

マミ「お気に入りのスプーンだったのに!」

杏子「えぇ!?」

マミが杏子に掴みかかる。
いや、抱きつく。

マミ「ばか。…ありがとう」

そして、再び唇を重ねる。


一方。

ゆま「キュゥべぇ、次は何して遊ぶ?」

QB「こ、これは、エントロピーの損失だよ、マミぃ、まだぁ?(泣)」


さらに一方。
マミのマンションをのぞむ、少し離れたビルの屋上。

ほむら「くっ!台所には窓がないから覗けないわ!
キスなの?キスしたの!?音声だけじゃ生殺しだわ!」

  • 最終更新:2011-06-24 00:09:37

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