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マミ「え?喫茶店?」
ある日の朝。学校へ行くため、制服に着替えるマミに、ベッドから杏子が声をかけた。
杏子「うん。今日、そっちが学校終わったらさ、待ち合わせして、行かないか?」
マミ「ええ、行きましょう。」
杏子「出かけてる間、ゆまはキュゥべぇの奴に面倒見させるし。」
まだベッドで眠るゆまの頭を撫でながら、杏子が提案する。
QB「え~」
杏子「なんだよ、嫌なのかよ」
マミ「キュゥべぇ、お願いできる?」
QB「任せてよ!マミ!」
杏子「おい!あたしと反応が違いすぎねえか!?」
マミ「うふふ」
そして放課後。
マミ「ここが杏子の言っていた喫茶店?綺麗なお店ね。」
階段を少し登った場所にある、カフェテラスに腰かける。
マミ「杏子はまだ来てないのかしら。あ。」
杏子が、人混みをかき分け、階段を登ってきた。
マミ(人混みの中からでも、杏子を見つけるの、うまくなったかな)
だが、少し階段を登った所で、こちらを見て固まってしまった。
マミ(どうしたのかしら?急に不機嫌な顔して。)
杏子「…帰るぞ。」
マミ「え?」
杏子「いいから!」
腕を掴んで、ずんずんと階段を降りてゆく。
マミ「ちょっと?杏子、痛いわ」
周囲の人がこちらを見ているのに気がついた。
杏子「見てんじゃねえ!見せもんじゃねえぞ!」
杏子が周囲の人に怒鳴りつける。
マミ「いきなりなんなの?ひどいわ!」
杏子「うるさいっ。行くぞ!」
マミ(む)
バチンっ!
杏子「いてっ?!」
マミ「楽しみにしていたのに!ばか!」
杏子「お、おい!まって!」
マミ「え、喫茶店?」
ある日の朝。
学校に行くため、制服に着替えるマミを見つめながら、声をかける。
杏子(綺麗な体だなあ)
華奢なのに、出る所は出ている体。
杏子(おっと、あんまり見つめてたら怒られるな)
実は昨日バイトの給料日だったのだ。
日頃お世話になっている、マミをデートに誘ってみた、というわけだ。
杏子「うん。今日さ、そっちが学校終わったらさ、待ち合わせして、行かないか?」
マミ「ええ、行きましょう。」
杏子(よし!だが、問題はゆまだ。)
ついてくるとか言えば大変だ。
だが、作戦はねっている。
杏子「出かけてる間、ゆまの面倒はキュゥべぇの奴に面倒見させるし。」
QB「えー」
こいつ!
だが、マミがお願いをすると、キュゥべぇのは急に態度をかえ、了承した。
杏子(久しぶりに二人きりだな)
そして、放課後。
待ち合わせの場所へ向かって走る。
杏子(やべ、少し遅れたか。お)
いた。
階段を登った先のカフェテラスに座っている少女。
杏子(…やっぱり目立ってるな)
やっぱ可愛いもんな。
なんて思いながら階段を登っている途中。
杏子(な、な!?)
目の前に飛び込んできたのは、マミのパンツ!
杏子(か、階段を登る途中の目線が、丁度座ってる女の子の脚の間の高さになってるのか)
一瞬見とれていたが。
杏子(まてよ?あたしが見えるって事は)
辺りを見舞わす。
やはり、階段の途中からマミのスカートの中を覗きこんでいる男が沢山いた。
杏子「帰るぞ!」
マミ「え?」
杏子「いいから!」
マミ「ちょっと?杏子、痛いわ。」
杏子「見てんじゃねぇ!見せもんじゃねえぞ!」
ちくしょう!マミをやらしい目で見やがって!
マミ「いきなりなんなの?ひどいわ!」
男がお前のパンツ覗きこんでる、なんて説明できるわけない。
マミのやつは傷つくに違いない。
杏子「うるさいっ!行くぞ!」
その瞬間。
頬に激痛が走った。
杏子「いてっ!?」
マミ「楽しみにしてたのに!ばか!」
杏子「お、おい!まって!」
な、なんでぇ!?
マミ(もう、杏子のばか!)
せっかくのデートなのに、あんなに乱暴にして、周りの人に威嚇するし。
杏子につかまれた手が痛い。
マミ(…でも。)
それ以上に、杏子を叩いた手が痛い。
マミ(杏子にも理由があったのかもしれないのに。悪い事しちゃったかしら…。あら)
少女「うーん、困ったぁ」
少女が道端で唸っている。
マミ「どうしたの?」
少女「大切な指輪…無くしちゃったんだ。どこで落としたのかなあ」
マミ「大変ね、私も手伝うわ。」
少女「…。ありがと」
二人で歩きながら、指輪を探す。だけど。
マミ「…見つからないわね」
少女「私の。友達に貰った大切な指輪なんだ。絶対見つけるんだ。君は帰っていいよ。私に付き合う必要はない」
マミ「ううん。もう少し、手伝うわ。」
杏子(マミの奴、人の気もしらないで!)
マミに叩かれた頬が痛い。
杏子(でも、もう少し言い方もあったかな…)
でも、それ以上に心が痛い。
杏子(マミを追いかけ…。でも、いきなり叩く事ないよな。あーもう、しらねえ!)
マミ「楽しみにしてたのに!」
マミの言葉が蘇る。
杏子「あーもう、ちくしょう!」
そして、杏子はマミの走り去った方向へ駆け出した。
だけど。
杏子(あーもう、どこ行ったんだ?)
見つからない。
杏子(足速すぎだろ…)
道端にへたりこむ。
杏子(お。指輪?)
道に落ちていた指輪をひらいあげる。
杏子(綺麗だな。お、寸法、マミにぴったりだ。)
それをポケットにつっこむ。
杏子(…マミに上げたら、機嫌よくなるかな)
そんな杏子を物陰から見つめる人影。
ほむら「…デートだというから覗きにきたのに。いったい何をしてるのかしら」
少女「あの、ここらで女の子見かけませんでした?黒い髪をショートカットにした子なんですけど。」
ほむら「…悪いけど知らないわ。…え?」
少女「そう、どうもすいませんでした」
何かに気がつき振り向くが、少女はすでに立ち去っていた。
ほむら「…今の子。ただならぬ百合力をはっしていた。まさか…」
拾った指輪をポケットに入れ、マミを探す。
杏子(…一体どこに。あ。)
いた。金髪のクルクルおさげの美少女。
どんなに離れていても、マミの姿は見分けられる自信がある。
杏子「マ…」
声をかけようとした瞬間。もう一人の存在に気がつく。
杏子(誰だ?あいつ)
マミと仲良さそうに談笑している少女。
杏子(マミの奴、あたしが必死に探してたのに、なんだよ、そっちは女の子と仲良くしてたのかよ!)
一瞬。嫉妬で胸が締め付けられる。
杏子(…いや、落ち着け、杏子!お前の知っている、マミは。お前の好きなマミは、そんな少女だったか?)
否。
断じて否!
杏子(お人好しなマミの事だ、きっとまた人助けでもしてるに違いない。)
こそこそ、と近づく。
杏子(…なんかほむらになった気分だ)
少女「…指輪は見つからなかったけど。気持ちは嬉しかったよ。ありがとう、恩人。」
マミ「お役に立てなくてごめんなさい。大切な指輪だったのでしょう?」
少女「うん。私の命より尊い指輪だけど、恩人は気にしないで」
マミ「おもっ!重すぎるよ!」
杏子(指輪?まさかさっき拾ったこれか?)
マミ(ううん、困ったわね。)
命より尊いとか言われてしまうと、ほってはおけないし。
少女「指輪を無くしちゃった事はつらいけど。指輪よりもっと尊い人が私にはいるから。」
マミ「…それってあなたの彼氏?」
少女「違う。そんな低俗な存在じゃない。彼女はこの世界の何より尊い存在なんだ!」
マミ「彼女?女の子なのね、大切な人って。」
少女「そうだよ、恩人。おりこは私にとって全てなんだ!」
マミ「…素敵なお友達なのね、そのおりこさんって。」
少女「その通り!」
マミ「私も、大切な友達がいるんだけれど、さっき喧嘩しちゃって。」
少女「喧嘩したくらいで何を悩んでいるんだい、恩人。」
マミ「え?」
少女「喧嘩したら、ごめんなさい、それで解決だ。」
マミ「…。」
少女「私もおりこにごめんなさいしないとだ。」
マミ「そっか、指輪見つからなかったものね」
少女「うん、それもあるけれど。」
マミ「他にも何かあるの?」
少女「指輪探すのに必死で、待ち合わせの時間を越えてしまった。」
マミ「ええ?!大切な人なんでしょ?」
少女「…かれこれ4時間位。」
マミ「本当に大切な人なのよね!?」
杏子(なんか楽しそうだな…。)
物陰から覗きこむ、杏子。
マミと黒髪の少女が仲良く会話していて、出にくい。
杏子(でもこの指輪、探してるかもしれねえし…)
金髪の少女「あの。」
杏子「うわぁ!?」
突如後ろから声をかけられ、振り向く。
杏子「な、なんだよ、びっくりするだろうが!」
金髪の少女「…その指輪。間違いないわ、私がキリカにあげた指輪。」
杏子「ああ、これは…」
金髪の少女「…キリカを。キリカをどうしたの」
杏子「!」
杏子(なんだ、このプレッシャー!?)
背中に嫌な汗がたれる。
杏子(間違いない、こいつ、魔法少女!)
金髪の少女が球体を召喚する。
杏子(あれがあいつの武器?遠隔タイプか。相性悪いんだよな)
杏子も槍を召喚する。
人気のない路地裏。
ここでやる気か。
金髪の少女「キリカを、返してもらうわよ」
杏子「まて、この指輪は…」
問答無用、金髪の少女の武器が飛来する。
回避するが、起動をかえ、杏子に向かって飛んでくる。
杏子(ホーミングしてやがるか。ならば)
杏子「神槍!回天!!」
振りかざした杏子の槍が多節棍に姿を変え、球体をなぎはらう。
金髪の少女「…やるわね。だけど」
杏子(まだ何か隠してやがるのか?!)
金髪の少女「…あなた、必殺技の名前を叫んでるのですか?」
杏子「へ?あっ」
杏子(あたし、今、無意識で叫んでた?!)
恥ずかしくて顔から火がでる!
金髪の少女「…『魔法少女使い』の手駒というわけではなさそうね」
杏子「なに!?」
忘れもしない。ゆまを操っていた、あの男。
マミ「杏子!?」
少女「おりこ!」
戦いの音が聞こえたのか。
二人の少女が駆け寄ってきた。
ほむら「…やはり、『あの時』の百合カップル…」
そんなやり取りを、遠くから見つめるほむら。
ほむら「面白くなってきたわ!百合カップルが二組で百合力倍増よ!…あ、鼻血でた」
QB「…君は相変わらずだね。はい、ティッシュ」
ほむら「…。ありがとう」
マミ「…」
杏子「…」
みつめあう二人。どことなくぎこちない。
マミ「あ、あのっ」
少女「おりこ!!」
おりこ「キリカ、無事だったのね、良かった」
キリカ「うん、心配をかけてしまったね。私はおりこにあやまらないといけないんだ。」
おりこ「え?」
キリカ「君にもらった指輪を無くしてしまって。それを探していたせいで君を待たせてしまった。」
キリカを優しく抱きしめるおりこ。
おりこ「ううん、いいのよ。私も今来たところだし。」
マミ「あなたも4時間遅刻!?」
おりこ「それに、指輪は…ね。」
杏子「あ、ああ。さっき、拾ったんだ」
キリカ「あ!」
杏子「うわっ」
杏子からひったくるように指輪を奪う。
杏子(速い!?あたしよりも?)
キリカ「良かった!ありがとう、恩人とそのおまけ!!」
杏子「あたしおまけ!?」
キリカ「それじゃあ行こう、おりこ。」
おりこ「ええ。」
杏子「お、おい」
おりこ「近いうちに。また会うわ。…いえ。」
こちらを見つめ、微笑みを浮かべる。
おりこ「また、『遭う』わ。必ず、ね」
去ってゆく二人。
マミ「?」
杏子「…。」
マミ「一体何者なのかしら。ねえ、杏子…あ。」
いつものように呼び掛けようとして、喧嘩をしていた事を思いだす。
そして。同時に、キリカの言葉を思いだす。
キリカ「喧嘩をしたらごめんなさい、それで解決だ。」
マミ「…杏子。さっきは、ごめんなさい。」
杏子「えっ?」
マミ「あなたの言い分も聞かないで、叩いちゃって。」
杏子「…白。」
マミ「え?」
杏子「パンツの色。朝と色が違ってる。家でシャワーでもあびた時着替えた?」
マミ「ええ?!な、何で知ってるの!?今日、体育があったから、デート前に家に帰ってシャワーあびたけど。」
杏子「見えてたんだよ。」
マミ「…私には話が見えないのだけど。」
杏子「あの喫茶店、階段からお前のパンツ見えてたんだ。」
マミ「ふぇ?!」
マミの顔は真っ赤に染まっていた。
杏子「お前のパンツ見られたくなかったから、乱暴な事して。…ごめん」
マミ「…そうだったのね。私のために。ありがとう、杏子。」
杏子の胸に、額をくっつけ寄り添う。
杏子「あ、あ、いや。別に、もう気にしてないから」
ほむら「あ、あれは!カップル技の中でもかなりの難易度をほこる、『額をくっつけておしゃべり』!?
照れている表情をあえて隠す事で、相手により一層のかわいさをアピールする奥義!さすが巴先輩!」
QB「…わけがわからないよ」
夜のベンチで肩をよせあい座る二人。
マミ「ねえ杏子?そういえば、どうして指輪を拾っていたの?」
杏子「ああ、綺麗だったからさ。マミにあげたら機嫌治るかと…」
マミ「…へえ。拾った指輪を?」
杏子「あ、あれ?何で怒ってるんだ?」
ばちんっ
マミ「ただいま。」
杏子「…ただいま。」
マミ「…。」
杏子(マミの奴、何を怒ってんだよ。せっかく仲直りできたと思ったのに)
ゆま「おかえり、マミおねえちゃん、キョーコ。」
パタパタとかけてくるゆま。
ゆま「…。喧嘩でもしたの?」
マミ「何でもないのよ。今、ご飯を作るわね。」
台所へ向かうマミ。
ゆま「…うそ。」
杏子「ああ?」
ゆま「いつもマミおねえちゃんは、杏子と二人で帰っても、杏子のただいま、におかえりなさいって返してたもん」
杏子「…ゆま、くうかい?」
ポッキーを差し出す。
杏子「ベランダにでもでて、二人で話そうぜ?」
ベランダ
ゆま「ポッキー美味しい!」
杏子「そうか」
ゆま「キョーコ、話って?」
杏子「…さっきまで、公園のベンチで仲良く座ってたんだよ。なのに」
ゆま「?」
杏子「綺麗な指輪拾ったから、マミにあげようかと思ったって言ったらおこりだして」
ゆま「それはキョーコが悪い!」
杏子「なんでだよ!」
ゆま「だって、女の子にとって、指輪を贈られる事ってとても大きな事だもん。
それを拾った指輪で、なんて。」
杏子「そうゆうもんなのか?綺麗ならいいじゃねえかあたしはそんな事で怒らないよ」
ゆま「えー!じゃあマミおねえちゃんが手作りケーキのかわりに拾ったお菓子をキョーコに食べさせたらどうするの?」
杏子「怒る。」
ゆま「…。」
杏子「…。」
ゆま「わかったよね?」
杏子「でも、お菓子と指輪は違うだろ!マミのケーキ楽しみにしてたら拾ったお菓子、とか傷つくわ!」
ゆま「ほらね」
杏子「…うん。」
にっこり笑うゆま。
杏子「…マミに、あやまってくる」
一方。台所。
マミ「さて、なにを…。きゃあ!?」
QB「マミ…おかえり」
そこにいたのはキュゥべぇ。
マミ「ぼろぼろじゃない!一体なにが!?」
QB「…子供の相手は疲れるよ。ガク」
マミ「きゅ、キュゥべぇ!」
台所
杏子「マミ…。ちょっといいかい?」
マミ「…杏子」
QB「…僕は少し席を離すよ。なんとなく再びゆまの相手をしなきゃいけない空気だ。」
マミ「あ。…料理、つくらなきゃ」
くる、と背中向けて、料理をつくり始めるマミ。
杏子「…」
マミ「きゃっ」
後ろから、マミを抱きしめる杏子。
杏子「…さっきはあたしが悪かった。デリバリーがないこと言って」
マミ(…デリバリー?杏子、ピッツァが食べたいのかしら)
マミ「き、杏子、ピッ…んっ?!」
マミが振り返った瞬間、唇が奪われる。
マミ(ふぇぇ!?は、激しすぎ、息ができないっ)
必死に杏子の体を叩く。
一度唇が離れる。
杏子「マミ。」
マミ「…ふぁい」
目がとろん、としているマミ。
杏子「ごめん」
もう一度、キス。
唇ではなく、その少し横、左頬。
マミ(…仲直りのちゅう)
マミ「私のほうこそ、ごめんなさい。つまらない事で怒ってしまって。
…私、面倒な女の子なのかしら」
杏子「そんな事ねーよ。…なあマミ、銀のスプーンとかもってる?」
マミ「え?うん、少し前にアンティークショップで買ったのがそこの食器棚に」
杏子「これか」
銀のスプーンを取りだし。
マミの左手を握る。
マミ「え?」
スプーンをマミの左手にあてる。
魔法。
マミ「…綺麗」
銀のスプーンは姿を変え。
マミの左手に指輪として収まった。
杏子「へへ」
マミがうつむき肩を震わせる。
杏子「どうかな」
マミ「お気に入りのスプーンだったのに!」
杏子「えぇ!?」
マミが杏子に掴みかかる。
いや、抱きつく。
マミ「ばか。…ありがとう」
そして、再び唇を重ねる。
一方。
ゆま「キュゥべぇ、次は何して遊ぶ?」
QB「こ、これは、エントロピーの損失だよ、マミぃ、まだぁ?(泣)」
さらに一方。
マミのマンションをのぞむ、少し離れたビルの屋上。
ほむら「くっ!台所には窓がないから覗けないわ!
キスなの?キスしたの!?音声だけじゃ生殺しだわ!」
- 最終更新:2011-06-24 00:09:37